「魔法の杖は、どこにあるんだろう…」
「あの人に訊いても、つまらない棒切れしかくれなかった」
…「その棒切れでも歩けるのは、あなただからだよ」
…「そりゃ、お互い、人間ということでは同じだけどさ。あなたの旅路と、私の旅路は同じではないんだよ」
…「私の足は、両肩は、とても重くなってて、そんなんじゃ歩けないんだよ」
そう思って、ズルズル足を引きずりながら、今度はみんなが凄いと褒め称える先生に会いに行ってみた。
私の足の重りを外して、歪んでしまった足でも歩いていける魔法の杖はあるかしら…。
「あの凄い先生に尋ねても、魔法の杖どころか、つまらない理屈ばかり言われたよ…」
「先生の本? 読んだよ? 偉大なんだね。崇高だね。でも、私は楽しく歩けないよ?」
…「どうしたらいいですか?」
いろんな人のアドバイスも、たくさん訊いてきた。
随分と素直…にね。圧力で首が折れそうなぐらいに。
素直を通り越して、従順にさせられていたかもね。
本だって、薦められるから読んできたよ。
吐きそうなのに、目を皿のようにしてね。
でも、このモヤモヤした感覚は晴れないし、足の重りの鎖はますます硬くなるかのようだよ。
…「どうしたら、いいんだい?」
「誰か、教えられる人がいるなら、教えてくれよ…」
なんとなく、誰もいないんだろう…って、そんな気がするし、でも、自分ではどうしたらいいかわかんない…。
顔も見せたくないし、マスクは家の中でも付けてるし、外では絶対に帽子と黒いサングラスは外さない。
こんな私を、誰も見ないで…。
寂しいよ…寒いよ…
窒息しそうだよ…
何も考えられなくなるよ…
存在しているだけで、息しているだけで辛いよ…
誰か、助けて…
誰にも、助けられたくない…
…
…
真っ暗闇の中を、どれだけ過ごしただろう。
黒いスモッグが上から落ちてきて、全身を重く包み込んで身動き取れなくなる…
外は明るいのに、私は独りで…
誰も、私を知らない…
呼吸もできないのに「逃げないで」なんて、私を苦しめる言葉のナイフは、もういらない。
逃げるか、逃げないかは、私が決めること。
そんなこと言うだけ言って、一緒に歩いてくれるわけでもないのに言いっ放しだよね?
満足かな? 私はその満足のためにいるのかい?
逃げないと死んでしまうなら、そりゃ逃げるでしょ!?
私に死ねと言うのかい?
「それぐらい、みんな耐えてるんだよ」!?
何を持って「それぐらい」?! 「みんな」と同じにしてる?!
矢が2〜3本ぐらいしか刺さっていないのと、20〜30本刺さっているのは同じなのかい?
そんなことは目に見えないからって…部分を切り取って矮小化するのはありなのかい?
都合よく置き換えて歪めてしまうのはあり、なのかい?
分かってくれなんて思いやしないよ。
ただ、少しずつ少しずつ、そのまま寄り添ってくれた存在だけが、心だけが、私のこわばりガチガチに固まり尽くした心を、壊さないでいてくれた。
その存在を見つめ続けること、感じ続けることだけが、私に唯一できる呼吸だった。
ガチガチに震える私への灯し火となってくれた。
知識なんかじゃない。もちろん、テクニックなんかじゃない。
キレイごとでもないし、悪に染まることでもない。
逃げたい私も、それも私。
逃げずに向かっていくには、スモッグにハマってる時に一人ではできっこないんだよ…。
真っ黒で重たいスモッグで呼吸不全起こすよりは、ずっといいよ。
それこそ、そんな空間に紛れ込んだら、みんな逃げるでしょ?!
全身を蝕んで嘔吐感が満載になったり、骨は軋むし頭痛もする。
当然、眠れもしないし、何も食べれやしなくなる。
… 耐えられる?
… みんなが皆、そんなのを耐えてるの?
そりゃ、他にも同じように感じている人はいるだろうけど、こんなこと「みんな」が感じてるの?
どんなにあがいても「耐えられない痛み」、それの本当は言葉になんかならないよね…。
心の中の風景なんて誰の目にも見えないけれど、ね。
そんな彷徨ってきた私に、不器用ながらも、あなたが伴にらせん階段を登るかのように、そのまま寄り添おうといてくれたから、私は生きていける。
少しずつ、パンドラの箱を開いて、スモッグを晴らせるように歩んでいける。
私のスモッグを知っても、一緒にいてくれる愛してくれる存在があるから…。
逃げずに晴らしていくには、いきなりになんて出来なくてね、順番があるんだよ。
そうして、その先の先の…自分の奥深くになんだろうね。
きっと、最大で最高の宝物、「人生の魔法の杖の在り処」があるとしたら…。
ネイティブ・アメリカンの有名な言葉からー
「あなたが生まれたとき、周りの人は笑って、あなたは泣いていたでしょう。だから、あなたが死ぬときは、あなたが笑って、周りの人が泣くような人生をおくりなさい」
少しでも、このように生きたいね^^
~ 親愛なる娘へ
きみが生まれてきてくれた時のこと、思い出さない日は本当にないよ。
涙が出て止まらなかった、あの時…。
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