「ただ一人…」に向けていく強さのリアル

「伝えきる」って、案外、難しい…

 

そう感じたことはないでしょうか?

書くことで癒されたり自己満足できたり、なんとなく雑記を書いていたかったりするものとは別で、可能な限り明確に伝えきりたい!・ご縁の架け橋にしたいという明確な目的があるのに、それでも伝わりきらないのには理由があります。

 

その理由は一つではありませんが、根幹的なところでの要因についてここでは触れていきます。

 

ここで、ただ一人に向けて書かれた歌詞・創られた曲を思い浮かべてみてください。 

年代や性別を問わず、多くの人に受け入れられているような恋愛の詩♪

あなたは、どんな歌が好きですか(^^)?

それは結果として多くの方に受け入れられていますが、元々は、ただ一人の人だけを、どこまでも強く…深く想い続けて書かれたものではないでしょうか?

ただ一人に向けていたものでありながら、その強い想いは多くの人に受け入れられます。 

ですが創り手は、ただ一人の人だけを強く思い浮かべて創っています。 

また、その歌を好きではない人も、必ず、いるでしょう。 

必要としている人にさえ「伝われば」、それでいいのではないでしょうか?

あの人も好き、この人も好き、他にも…この人も好き、という視点で書かれて空振りし続けるよりは…。

ずっと…。

万人向けを狙わない、八方美人ではなく、ただ一人だけを強く想う…。

それが根っことなり幹となり、結果として、ただ一人以外の方々にも受け入れられていく枝葉を実らせられる根幹となります。

 

「ただ一人」に絞り込むからと言っても他を切り捨てることではなく、「ただ一人」に向けた強い思いが他の方の共感をも呼び込めるとなります。

  • 「ただ一人」…メインターゲット
  • 「他の方」…サブターゲット

メインターゲットすらも動かせなければ、サブターゲットも動かせられません。

 

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」はマグレでしかない

 

マグレは、いつでも再現できるものではないからマグレなのであって、もし、再現できないことを期待していたとしたらドツボにハマるのは言うまでもないことかと思います。

ただ「人事を尽くして天命を待つ」の状態までやり続けられた先でマグレのようなものが起こって、「マグレも実力のうち」と言えるレベルなら別かもしれません。

そのマグレのようなものは、まるで、はるか上空に天女がいたとして、その天女が上から糸を垂らし、その意図が地上にいて立っている人が持っている針の穴に通るぐらいの奇跡的な確率で得られたものだったとしても、です。

その奇跡から得られた気づきや発見は「人事を尽くし切った」からこそ与えられたものであり、まさしくかけがえのない、言葉に言い尽くせない価値のあるものです。

そして、そこまでしたからこそ「実力」となっているとも言えるのではないでしょうか。

では、その奇跡は、一体、どこから起こるのでしょうか?

ここで「ただ一人に…」向けていくことが及ぼせる現実的な力の強さの事例から、最近、私がもっとも胸に響いたものをご紹介いたします。

今でも私の中では感動の余韻が残っていて、今後の生き様にも影響を与えてくれるだろうな…と感じています。

はっきり言って「凄まじすぎる…」と言えてしまうもので、実際はここまですることは私たちは稀であり、ここまですることで失う物事も大きいかもしれません。

だからこそ「奇跡」を呼び起こしたのでしょうがリアルケースの一つとして、このような人もいるんだ、と知ることができたのは、私にはとても強力に響いています。

現実に追い込まれることを私は好まないですし誰も好むわけではないと思いますが、次の章でご紹介する木村さんも追い込まれたかったわけではありません。

ここで踏まえたいのは追い込まれましょう、などということではありません。

「ただ一人への想い」から始まった物事が強く深いほどに、自らが想像もしていなかった共鳴と気づきと智慧を与えてくれるということを、これからも知りたいと私は思います。

 

ただ一人への想いが奇跡を起こす

 

ここでノンフィクションのベストセラー『奇跡のリンゴ』(著:石川拓治、監修:NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」制作班)をご紹介いたします。

2013年には映画化もされていてフィレンツェ映画祭では観客賞を受賞していたり、満足度ランクトップにもなっています。

 

奇跡のリンゴ 映画この映画は、Amazonからも視聴することができます。

 

「BOOK」データベースより以下に引用します。

リンゴ栽培には農薬が不可欠。誰もが信じて疑わないその「真実」に挑んだ男がいた。農家、木村秋則。

「死ぬくらいなら、バカになればいい」そう言って、醤油、牛乳、酢など、農薬に代わる「何か」を探して手を尽くす。

やがて収入はなくなり、どん底生活に突入。壮絶な孤独と絶望を乗り越え、ようやく木村が辿り着いたもうひとつの「真実」とは。

 

この実話ストーリーは1970年代の青森が舞台となっていますが、当時、リンゴ栽培では農薬を使うのが常識で、農薬は救世主でした。

そのような中、他の野菜などは無農薬で出来ても、リンゴの無農薬栽培だけは「神の領域」と呼ばれていたそうです。

それなのに木村秋則さんは無謀にも無農薬栽培にチャレンジして、11年後には世界初の無農薬・無施肥のリンゴ栽培に成功したわけですが、その間に生活は激しく困窮、小さな農村で周囲の人たちからは疎外されていくという…プライドも尊厳もなくしていく苦境です。

 

なぜ、そのようになってまでも諦めなかったのか?

そもそも、そこまで無謀な挑戦をなぜ始めたのか?

何を失って、何を得ていったのか? そして、取り戻せてきたのか?

ストーリーの部分的なネタバレになってしまいますが、無農薬のリンゴ栽培、その実現のために11年もかかってしまったことから地獄と思えるような泥沼の現実になっていきます。

この年数に、まず驚きました。11年ですよ…。

それも、ただの11年ではなく、収入も周囲との人間関係も尊厳やプライドの欠片もなくしていった11年です。

後述する想いから無農薬栽培を続けようとしたことで、リンゴの実がならないどころか花も咲かなくなった。葉っぱも病気になって枯れていく。

それでも人間が食べられるもので(例えば、わさびや酢など…etc)農薬に代わる効果のあるものを検証する日々を続けていき、少しずつ効果が出てきたようには思えるが3年目には害虫の大量発生を招いてしまい葉っぱすら全滅とともに、隣の畑の農家からも激しく責められる。

それでも挑戦を続けるが、どんどんと貧乏になりトラックを始め様々なものを売り払っても、畑の隙間で作った野菜を売ったり出稼ぎをするだけでは生活は困窮…。

小さな田舎の農村で周囲からはのけ者にされていき、電気も止まり税金の未納も続いたことから、しまいには畑の半分が差し押さえられてしまう…。

震える手で畑の差し押さえに同意する契約書にサインするが、そうして、だんだんとメンタルも壊れていった秋則さん…。

仮に農薬を使った栽培に戻すとしても、リンゴが元に戻るのには何年もかかってしまう。「戻るも地獄…進むも地獄だぁ…」

そんな中でも奥さんや(入り婿なので)義父、小学生の娘たちは反対どころか、絶対に「諦めないで欲しい」という思いを強く持ち続けてくれていた。

だが周囲から見て家族、特に娘まで学校で惨めな思いをしていくことから、学生時代の親友や肉親からも(家族を)「巻き込むな!」と首根っこを掴まれて秋則さんは強烈に責められる。

何度も心折れながら踏ん張り続けてきた秋則さんは実家からの支援も受けられず、精魂尽き果てたかのように、ついに夫婦としての別れを決意したり無農薬栽培を止めようと思い詰めるが、それでも「止めないで!」と秋則さんに訴える長女…。

その長女がストレス性から高熱を出して倒れても、誰も車を貸してくれない…。娘を背負い救急病院まで必死に農道を駆け走る…。

幸い、生命には別状なく小さな子どもがよくなる症状ということで大事には至らなかったが、その後、病院から家には帰らずロープを持って山まで歩く秋則さん…。

「これで皆んなが幸せになれる」と絶望の笑みで自殺しようとした木の枝にかけたロープが落ちて、自分自身も斜面を滑り落ちる。

その時、藪と雑草、虫だらけの山中にそびえるリンゴの木を見て…

ハッとして近寄り、青々と茂った葉、生き生きとした幹に触れ、その根の土を食べてみて気がついた、大きな大きな発見とは…。

 

これは木村さんが自殺直前の山の中で、たまたま転げ落ちたことから気がつけた発見であり、無謀な挑戦をやり続けた木村さんだからこそ見出せたと言えます。

…気になる方はぜひ、ベストセラー書籍の『奇跡のリンゴ』を手に取っていただくか、または映画版をご覧いただければと思います。

頭で理解しようと考えるよりも、感じるほうが先だからです。

 

なぜ、無謀な挑戦を?!

 

木村さんは今では全国で農業指導を行なっているそうですが、彼が無謀な挑戦をしたきっかけは奥さんの存在でした。

奇跡のリンゴは、ただ一人への思いから

 

農薬を撒くたび体調を壊して吐いたり、皮膚がただれてしまう奥さんを観て「なんとかしなければ…」と木村さんは無謀な挑戦を始めていったわけですが、その中で福岡正信氏の自然農法の書籍に出逢い「これだ!」と目覚め始めます。

つまり、全くの独りよがりから始めたわけでもないのですが、木村さんは入り婿ですので畑を無農薬に切り替えていくためには奥さんの父親の許可が必要となります。

その義父も、かつて兵隊時代の戦地で救援も来ず戦友たちも亡くなっていく中、藪の中に茂る山中で大きなナスビを作れた経験から木村さんの無農薬栽培を何らかの覚悟の上で許可します。

この「親父」の許可がなければ木村さんも挑戦を始められなかったのでは?と想像できますが、最初の減農薬の段階では賛同してくれていた周囲の若手仲間たちは「無農薬なんてできるか。組合にケンカを売ってどうなる!」と去ってしまいます。

それでも覚悟を決めて挑戦を続けた木村さんでしたが、収入も周囲の農家仲間や自身の実家の助けもなくなって、どん底生活になってでも…ですので、年々、追い込まれて…。

そして、このことは彼自身のことだけではなく伴に暮らす家族にも深く強く共鳴されていき、本人が諦めようとしても家族が諦めさせてくれないことから、彼一人の挑戦・生き様ではなくなっているのです。

リンゴの木が単体で成り立っているのではなく、周囲の動植物たちとともにあるように、人間もまた単体で成り立っているわけではないのですね。

ここで書籍の『奇跡のリンゴ』から、以下を引用します。

「リンゴの木は、リンゴの木だけで生きているわけではない。

周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。

人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている」

詳しく知りたい方はぜひ、ベストセラー書籍の『奇跡のリンゴ』を手に取っていただくか、または映画版をご覧いただければと思います。

頭で理解しようと考えることは、どうしたって限りがありますので心で感じるほうが先です。

 

『ただ一人に…』向けて、に寄せて

 

繰り返しになりますが、現実に追い込まれることを私は好まないですし誰も好むわけではないと思いますが、木村さんも追い込まれたかったわけではありません。

ここで踏まえたいのは追い込まれましょう、などということではありません。

「ただ一人への想い」から始まった物事が強く深いほどに、自らが想像もしていなかった共鳴と気づきと智慧を与えてくれるということを、これからも知りたいと私は思います。

傾聴の祖、来談者中心療法(Client-Centered Therapy)を創始したカール・ロジャーズの言葉に、以下のようなものがあります。

「最も個人的なものが、最も普遍的である。

自分が最も私的で、最も個人的なことだから他の人には理解しがたいと思っていた感情が、結果的に多くの人の共鳴を得る表現だった。

一人ひとりの内の最も個人的なもの、ユニークなものこそ、それをわかちあうと他の人の心に深く語りかける要素となる。

詩人や芸術がそれに当たる。」

この言葉を受けて私は、「もっとも個人的なことは、もっとも普遍的なことに繋がる」というフレーズを忘れないようになりました。

私の視点で付け加えるならば、「もっとも個人的なことを突き詰めていけば、もっとも普遍的な伝播に繋がる」というような意味です。

これには現実的な視点で検証をしながらブラッシュアップを重ねたりしていくものですが、その視点も独りよがりではない根拠のあるものを必要に応じて得ていく学びが伴います。

 

根っこが命運を大きく分ける

 

ここで触れたいのは「なぜ、それをするのか?」・「なぜ、伝えようとするのか?」という根幹的なWhyが根っこだということです。

活動者にとっての「Why(なぜ?)」って?

 

例として、周囲の他の畑の農薬栽培リンゴが台風で壊滅的になった時も、奇跡のリンゴだけは葉や実がほとんど落ちることもなく無事だったそうです。

それは表面的には視えないところで根の広がりと深さが他の(農薬栽培)リンゴより、ずっと深く広がっていたからということですが、それだけではなくて自然農法の力で生かされて育ってきた養分が木の隅々にまで染み渡って、本来の強さになっていたからではないでしょうか?

私も、このようなリンゴの木のように育ちたいと思います。(肉体的な成長は、とっくに止まっていますがw)

 

よければ以下の拙記事も、併せてご覧いただきましたら幸いです。

続・ただ一人に…

以下は厳しいかもしれませんが…

「矢が届かないのは」?

 

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