「自己呈示」とは?—あなたが演じる“自分”のリアル

「本当の自分って何?」

そう考えたことがある人は多いのではないでしょうか。

日常生活の中で、私たちはシチュエーションに応じて異なる顔を見せています。

たとえば、職場では責任感があるしっかり者として振る舞い、友人の前ではちょっと砕けた陽気な自分でいる。

そして、SNSでは「映える」自分を演出する……。

これこそが、心理学でいう「自己呈示(Self-Presentation)」です。

要するに、「他人にどう見られたいか」を意識して、自分を演出する行動のことを指します。

 

なぜ人は自己呈示をするのか?

 

自己呈示は本能的な行動とも言えます。

社会の中で生きる以上、他者からの評価が私たちの人生に大きな影響を与えます。

良い印象を持たれたい、信頼されたい、好かれたい——そんな願望が、無意識のうちに自己呈示を促しているのです。

アメリカの社会学者アーヴィング・ゴッフマンは、自己呈示を「ドラマの舞台」に例えました。

つまり、私たちは役者であり、日常のあらゆる場面がステージなのです。

職場、学校、家庭、それぞれのシーンで異なる役を演じ、時には小道具(服装や言葉遣い)を使ってキャラクターを作り上げます。

 

自己呈示の具体例—ある男性の一日

たとえば、ある男性の1日を想像してみましょう。

 

AM8:00—職場の自分

出社して上司と顔を合わせる。

彼は「信頼できる社員」でありたいと思い、礼儀正しく、真面目な態度を取る。

昨日の夜ふかしで眠いが、それを見せるわけにはいかない。

背筋を伸ばし、ハキハキと話し、「仕事がデキる人間」に見せようとする。

 

PM7:00—友人との飲み会

仕事終わり、学生時代の友人と居酒屋へ。

先ほどの職場モードはオフになり、リラックスした表情で冗談を交えながら話す。

ここでは「気のいい仲間」としての自分を見せる。

多少の失敗談も笑い話に変え、場を盛り上げる。

 

PM11:00—SNSに投稿

帰宅後、飲み会の楽しげな写真をInstagramにアップ。

「#最高の仲間」「#楽しい時間」といったハッシュタグを添えて。

実際は疲れていたし、会話も途中でちょっと気まずい瞬間があったけれど、それは載せない。

SNS上では「リア充」な自分を演出する。

 

……さて、どの自分が「本当」なのか?

本当の自分とは?自己呈示とアイデンティティの境界

 

心理学的には、どれも「本当の自分」であると言えます。

なぜなら、私たちはシーンごとに適した振る舞いを選びながら生きているからですね。

「演じる」と聞くと、まるで偽っているかのような印象を受けますが、むしろそれは社会的な適応の一環と言えます。

もちろん、自己呈示には「誠実な自己呈示」と「戦略的な自己呈示」があります。

  • 誠実な自己呈示
    自分の本心をそのまま表現し、自然体で振る舞う。

  • 戦略的な自己呈示
    意図的に自分を良く見せたり、時には都合の悪い部分を隠したりする。

多くの人はこの両者を使い分けています。

仕事では戦略的に振る舞い、プライベートでは誠実な自己呈示を重視する—

—そんなバランスを取りながら、私たちは生きているのです。

 

自己呈示とどう向き合うか?—無理をしない「ちょうどいい自分」

 

自己呈示は決して悪いことではありません。しかし、それに疲れてしまうこともあります。

職場で無理をしすぎて燃え尽きたり、SNSで「理想の自分」を作り込むことに必死になったり……。

だからこそ、適度な自己呈示を心がけることが大切です。

  • 無理に背伸びしすぎない
    完璧な自分を演じる必要はない。

  • 素の自分を大切にする場所を持つ
    信頼できる友人や家族とリラックスできる時間を作る。

  • 自己呈示の目的を考える
    他人に好かれるためではなく、より良い人間関係を築くための手段として使う。

結局のところ、「本当の自分」は一つの固定されたものではなく、環境や状況によって変化するものです。

その変化を楽しみながら、無理のない範囲で自分を演じていくことが、健全な自己呈示の秘訣なのかもしれません。

あなたは、今日どんな「自分」を演じましたか?

 

自己呈示とは、他者に対して特定の印象を与えようとする行為であり、その種類は多岐にわたります。

 

1. 主張的自己呈示

  • 自己高揚:
    自分の能力や業績を積極的にアピールし、有能な印象を与えようとする。

  • 自己謙遜:
    自分の能力を控えめに表現し、謙虚な印象を与えようとする。

  • 同調:
    他者の意見や行動に合わせることで、協調性や親和性をアピールする。

  • 模範:
    倫理的に正しい行動をとることで、道徳的な印象を与えようとする。

  • 威嚇:
    自分の権力や地位を誇示することで、相手を威圧しようとする。

 

2. 防衛的自己呈示

  • 弁解:
    失敗や過ちを他者のせいにしたり、状況のせいにしたりして、責任を回避しようとする。

  • 正当化:
    自分の行動や信念を合理化することで、自己の正当性を主張しようとする。

  • 謝罪:
    自分の過ちを認め、謝罪することで、相手の許しを得ようとする。

  • セルフ・ハンディキャッピング:
    失敗する可能性を事前に示しておくことで、失敗した場合の言い訳を用意したり、失敗した場合のダメージを軽減しようとする。

 

3. その他の自己呈示

  • 印象操作:
    服装や言葉遣い、態度などを通して、特定の印象を与えようとする。

  • 自己開示:
    自分の情報を開示することで、親密な関係を築こうとする。

  • ごまかし:
    自分の欠点や弱点を隠そうとする。

 

これらの自己呈示は、状況や相手によって使い分けられます。

例えば、初対面の人には自己高揚的な自己呈示をすることがありますが、親しい友人には自己謙遜的な自己呈示をすることがあります。

また、自己呈示は必ずしも意識的に行われるとは限らず、無意識のうちに特定の印象を与えようとしている場合もあります。

また、自己呈示の種類はこれだけではなく、状況や目的に応じて、さらに細かく分類することができます。

例えば、以下のような自己呈示の種類も挙げられます。

  • 親和的自己呈示:
    他者との良好な関係を築こうとする自己呈示。

  • 有能的自己呈示:
    自分の能力や才能をアピールする自己呈示。

  • 道徳的自己呈示:
    自分の道徳性や誠実さをアピールする自己呈示。

  • カリスマ的自己呈示:
    自分の魅力やリーダーシップをアピールする自己呈示。

また、自己呈示の方法も言語的なものだけでなく、非言語的なものも含まれて、服装や髪型・表情・態度・ジェスチャーなども、自己呈示の手段となります。

他にも種類を挙げてみます。

 

対人関係における自己呈示

  • 好意的自己呈示:
    相手に好印象を与えようとする自己呈示。
    笑顔を見せる、相手の意見に賛同する、褒めるなどが挙げられます。

  • 協調的自己呈示:
    相手との協調関係を築こうとする自己呈示。
    相手の意見を尊重する、協力的な姿勢を見せるなどが挙げられます。

  • 支配的自己呈示:
    相手よりも優位に立とうとする自己呈示。
    自分の知識や能力を誇示する、命令的な口調で話すなどが挙げられます。

役割・地位における自己呈示

  • 専門家としての自己呈示:
    自分の専門知識やスキルをアピールする自己呈示。
    専門用語を使う、資格や実績を強調するなどが挙げられます。

  • リーダーとしての自己呈示:
    リーダーシップを発揮しようとする自己呈示。
    目標を明確にする、指示を出す、責任を負うなどが挙げられます。

  • 部下としての自己呈示:
    上司の指示に従順に従う自己呈示。
    謙譲語を使う、指示されたことを確実に実行するなどが挙げられます。

自己呈示の動機

自己呈示は、以下のような動機によって行われます。

  • 自己肯定感の維持・向上:
    他者からの肯定的な評価を得ることで、自己肯定感を高めようとする。

  • 目標達成:
    他者に良い印象を与えることで、協力や援助を得やすくし、目標達成を有利に進めようとする。

  • 人間関係の円滑化:
    他者との良好な関係を築き、維持しようとする。

  • 自己防衛:
    他者からの否定的な評価を避け、自己を守ろうとする。

 

自己呈示は、人間関係を円滑にするために重要な役割を果たしますが、過度な自己呈示は相手に不快感を与えたり、逆効果になることもあります。

自分をより良く見せるためのテクニックですが、相手との良好な関係を築くためには、誠実さや謙虚さも大切ですね。

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