目を凝らせば… 大判小判に 家宝まで

あるとき、聴いたストーリー

 

以前に教えてもらったストーリーで、時代背景は昔話ですが実話とのことです。

私の記憶が定かではないところもあるのですが、思い出しながら綴ってみます。

・・・

ある処に、人はとても良いけれど、どうにもズルい人たちに騙されてばかりで、困窮した暮らしをしている男がいました。

その男には、長年の幼なじみで仲の良い親友がおり、ふたりとも同じ寺小屋の出身です。

当時は、ふたりとも優秀な成績で卒業しました。

その親友も、とても人が良く、当時から二人はとても気が合った、自他共に認める仲の良い青年時代を過ごしたものです。

その親友のほうは、小さい事柄を除いて、誰かに人生を奪われるほど大きく騙されることは避けてこれて、かつ、一代で今の裕福な地位を築き上げました。

寺小屋を卒業した後も、鞄持ちをしてでも賢人・先人の教えを学び続けたことなどが、親友にとっては功を奏していたようです。

お互い、長年の幼なじみではありましたが、今、裕福になった親友は、その仕事のためにも遠い都に住むようになっています。

通信網が現代ほど発達していない時代では、多忙の中、たまに交わす手紙はありますが、なかなか密接なコミュニケーションは出来ません。

ある日、騙されてばかりの男はたまりかねて、親友に会いに行きました。

たまに交わしていた手紙で、彼はとても心配してくれていて「良かったら、いつでも立ち寄って欲しい」と、何度も声がけを受けていました。

なんだか気後れして足が遠のいていましたが、今の自分の家を視られるわけでもないし、「金を貸してくれとは言いたくもないし言わないが、何か打開への一歩になれば…」という気持ちでした

「彼に会って、あの屈託ない笑顔に触れたら…少しは気持ちも楽になるかもしれない」という思いもありました

 

「会いに来てくれた!」

 

親友の男は喜んで、スグにすべての予定をキャンセルして、寺小屋時代からの幼なじみの彼との再開を喜ぶ用意をしました。

いま目に視える立場など関係なく、彼にとっても大切な親友です。

最初は再開を喜び合って、昔話に華が咲きました

次第に話は、騙されてばかりの人生のことになっていきましたが、その話に快く付き合い、二人で朝まで迎え酒をしながら、時を共有しました。

遠い故郷から訪ねてきてくれて、身も心も疲れ果てて酔い潰れて寝ている彼に、そっと毛布をかけながら考えました。

 

「彼が金を貸してくれと求めてこなかったとは言え、激しく困窮しているのは、ヒシヒシと感じられる」

「ここで親友の間柄だからと言って、半ば強引にでもお金(答え)を貸したり与えるすることは出来るかもしれない…」

「受け取ってくれと、本気で言えば、きっと察してくれるだろう」

「しかし…果たして、それで良いのだろうか」

「でも、このままだったら、また騙されて、もっと困窮が続くだけではないのか…」

「故郷の町で、これ以上、騙されないようにと、いろんな人から山程のアドバイスや注意も受けてきたと言っていたし、コトバで、どうこうなることじゃないのだろう…」

「それに私が寺小屋を卒業した後、学んできた教えや経験則だって、一朝一夕に身に付けられるものではないし、いまの彼には、残念ながら理解できる用意が整っていないように思えてしまう…」

 

サプライズを仕掛けてみた

 

そこで裕福な状態にある男は、寝ている彼の着物の襟足の裏側に、黄金の小判を数枚ほど潜ませて縫い付けました。

小判ばかりにすると重くなるので、手荷物のカバンの奥のほうには大判も入れて、城が1つ買えるぐらいの家宝の1つも入れました。

物体としては小さな宝ですが、その価値はとんでもないものです。

それは彼にとっても決して安くはない重要な家宝であり、一瞬、躊躇したものの…寝ている親友の顔を観れば、惜しいとは思わずに入れることが出来ました。

「昔、一緒に遊んだ時のイタズラ感覚で受け取ってくれよ…」と。

「そういや皆としていた、おまえは鬼ごっこも隠れんぼも、優しすぎて負けてばかりだったよな」

「今でも変わらずに…全く…」と、優しすぎる彼に苦笑いの心境でした。

そうして、深酒して悪酔いした彼が目覚めるのを、静かに待ちました。

 

目が覚めてから

 

「あぁ、たいそう飲みすぎてしまったなぁ」

「昨日は、いやもう…今日か、たくさん付き合わせて悪かったな」

「ご馳走になってばかりで…」

 

家の者に用意させておいた朝食を振る舞いながら、親友の男は本心から微笑んで応えました。

「スゴい飲んだなぁ、大丈夫か?(笑)」

「いやいや、久しぶりに会えて嬉しかったよ」

「何度も言われてきたかもしれないけど、これからは、もっと注意深くな」

「きみの羽織っている着物もヨレヨレになってしまったり、綻びもあるけれど、よく触って観てみてると良いと思うよ」

「飲んだときに、ひっくり返してしまったカバンの中も乱れているみたいだけど、たまには、ちゃんと整理したら忘れていた発見があるかも…」

 

目覚めたばかりの彼は、すこしずつ朝食を食べながら答えました。

「ん、そうだな。着物もカバンもな…キレイにしないとな」

「笑えるぐらい乱れてるな(笑)」

「色々と、ありがとうな」

「ん、これは胃に優しそうだな…(モグモグ)」

 

親友の男は、もう一度、遠回しですが念を押しました。

「そうそう、自分を羽織っている着物は大事だからな」

「着物もカバンも、たまには丁寧に、よく観てな」

「案外、スグそこから大きな発見だってあったりするかもしれないし、“襟元やカバンの底とか”、足元をよく視てさ、注意深く…生きてくれよ」

「いつでも遠慮なんかせずに、遊びに来てくれよ」

 

彼は、もう一度、笑って答えました。

「相変わらず、几帳面だな(笑)」

「おぅおぅ、分かってるよ。着物にカバンな」

「帰ったら、ちゃんと全部、確認するよ」

「そうだな、着物も縫い直さないとアカンし、カバンの中もキレイにしないとな」

「おぅ、おまえも忙しいと思うけど、また来るよ」

「馬車まで用意してくれて助かるよ」

そうして、腹を満たした男は手を振って馬車に乗り込みました。

 

馬車に乗った彼に、もう一度、声をかけました。

「帰ったら、着物とカバンを”手洗いで”キレイにしてな!」

 

何度も笑って、走っていく馬車の窓から手を振ってくれる彼を見送りながら…

「着物とカバンを見直すんだぞ~!!」

 

馬車が遠ざかり視えなくなりました。

「くどかったかもしれないけど(笑)、あれだけ念を押したのだから、さすがに気がついてくれるだろう」

「同時に、目を凝らすことの大事さに気が付いてくれたらいいけど」

「まぁ、少なくとも、あの大判小判や宝があれば困窮からは抜け出せるし、また騙されたとしても、スグには困窮しないだろう」

「おれらは親友じゃないか。幸せに生きてくれよ…」

「大金があっても、昔から金への執着心もなくて、金遣いが荒くなる気性じゃないはずだし、祈ってるからな…」

「望んでいた学び舎にも入って智慧を授けてもらって、夢に進んでくれよ…」

 

…三年後

 

裕福な親友の元に、彼はまた訪ねて来てくれました。

親友は喜んで、駆け足で応接室に向かいました。

「だんだん手紙も返ってこなくなっていたけど、忙しくなっていたのかな?」

「大判小判にだって気が付いただろうし、身なりも整えて食事も出来ているだろう」

「あの宝の価値は分かったかな?」

「注意深さの大事さも気が付いて、順調に暮らしているかも知れない」

「余計なことしやがって…って、笑いながら怒られるかな(笑) その時は謝ろう^^」

 

応接室に向かう廊下を歩きながら、どんな血色の良い表情に会えるかと思うと、胸もはずみました。

ところが…彼は、三年前以上にボロボロの状態でした。

身なりは三年前に会った着物と同じものですが、今度は悲惨なほど異臭まで漂っています。

表情はどんよりと暗く、三年前のようなカラ元気も見受けられません。

パッと見では、まるで同年代に思えないほど老け込んでしまっています…。

 

親友の男はビックリして驚くとともに、たまらなくなってストレートに聴きました。

「…ど、どうしたんだ?!」

「三年前、来てくれたときに、その着物の襟足の裏に縫い付けた小判は、どうしたんだ?」

「カバンの底に忍ばせた大判や宝は?」

「まさか、それすらも全額、騙されて取られたのか?」

 

ヨロヨロした男は聴き返しました。

「えっ? 何のことだ? 襟足の裏? カバンの底?」

「そういや、たしか…着物やカバンが、どうとか言ってたよな…」

「なんか着物が、すこし重くなったような気はしたけど…」

擦れて薄くなっていた着物は、すこし強くチカラを入れるだけで手で破ることが出来ました。

黄金の小判たちが音を立てて、落ちて行きました。

彼は、スグ襟元にある黄金の小判にすら、気が付けていなかったのです。

買い換えることも出来なかったカバンも、そのまま残っていましたが、三年前、底に隠した大判や宝は、ベッタリとカビで覆われていました…。

そうして彼は何一つ気が付かないまま、働けど働けど、吸い取られて小銭をむしり取られるばかりで、身もココロもスレスレになっていきました。

しまいにココロも荒みきってきて、盗みや、それ以上の犯罪を働いてしまいそうな…そんな自分が怖くなって、親友の元に、今度は、遠路を何日もかけて徒歩だけでやって来たのでした。

小判があれば余裕で馬車にも乗れたし、その一部を使って夢だった学び舎に入ったり、才覚を伸ばして独立開業だって出来たかもしれないのに…。

宝があれば運転資金への不安だってなく、焦らずに腰を据えて進んでいけるんじゃないかって祈ったのに…。

 

黄金の大判小判や宝とは

 

あなたは、このストーリーから、どのようなことを感じられるでしょうか?

もう少し、うまく伝える術は考えられなかったのだろうか、とも思ってしまうかも知れませんね。

遠回しですし不器用にすら感じられるかも知れませんが、そこは親友同士としての計らいと思ったのかもしれません。

それはそうとしまして、このストーリーが語り継がれてきた理由があります。

ここで出てきた黄金の小判や宝とは、何も金銭に限ったことではない意味合いで用いられています。

 

まさか、大判小判や家宝が粋な?渡され方をするわけがないと思うか…

この大判小判や宝には、天からの教えのようなものが含まれているのかもしれません。

それは必ずしも、スグにワカルような形で表されるとは限らず、じっと耳や目を凝らして、初めて観えてくるものがあるという示唆も含まれています。

そのプロセスを経て行く中で自ら気がつくからこそ、その価値を見誤らずに活用できるようになる、という示唆とも言えます。

これを分かり易さ至上主義で安易に渡してしまうと、もしかしたら、暴飲暴食の酒池肉林に消えてしまったかもしれません。

それはその場だけのことに留まらず、宝くじで奥単位の大金が当たった時のように、受け取るマインドが用意されていなければ、途方もない大金が心身を蝕んで、身を滅ぼすことにもなり兼ねないかもしれないというような意味です。

裕福な親友は、彼に自ら見直して気づいて発見していくプロセスを経てほしくて、わざわざ、分かりにくいところにサプライズを仕掛けたとも考えられます。

それでも、充分に分かり易さが、くどいほどのヒントが伴っていたとも言えるわけですが…。

真摯に声に耳を傾けながらモノゴトの裏を観るとは、必ずしも嫌悪することではなくて、そこに、ご褒美があることに気が付けるかどうか、そこまで観ようとするかどうか…。

奥底までフォーカスして真意を観ていこうとするかどうか…。

意識を向けさえすれば、小判や宝はいつだって傍にあるんだというのが、このストーリーが、もっとも伝えたかったことではないでしょうか。

 

または、この親友の男が粋な計らいをしたつもりになっていて、ドヤ顔していそうでムカつくと観ますか?

おそらく心配のほうが強くて、でも、それをストレートには言えなくて…。

上から目線で、ドヤ顔しているようなニュアンスはなかったですけどね。

その程度の心理でしたら、小判はまだしも、いくらなんでも家宝まで入れられないでしょう。

少なくとも私が初めて聴いた時は、そんなニュアンスでは感じられませんでした。

マスコミに踊らされて、「裕福な人は、皆、悪いことをしている。貧乏人をバカにしている」的な偏見のサングラスがかかっていると、大切な本質を履き違えるかも知れないですね。

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